今回の検査結果
①Na(ナトリウム)/参考基準147~156 → 160(※基準値より高い)
②BUN(尿素窒素)/参考基準17.6~32.8 → 90.9(※基準値より高い)
③CRE(クレアチニン)/参考基準0.9~2.1 → 4.37(※基準値より高い)
④TBIL(総ビリルビン)/参考基準0.1~0.4 → 1.2(※基準値より高い)
⑤IP(無機リン)/参考基準2.6~6.0 → 8.8(※基準値より高い)
⑥RBC(赤血球)/参考基準550~1000 → 505(※基準値より低い)
⑦HGB(ヘモグロビン)/参考基準8~14 → 7.4(※基準値より低い)
⑧HCT(ヘマトクリット)/参考基準24~45 → 22.4(※基準値より低い)
⑨PLT(血小板)/参考基準30~80 → 12.4(※基準値より低い)
数値が基準値以下 or 以上になった原因は?
①Na(ナトリウム)
⇒通常、猫にとって塩分(塩化ナトリウム)を構成するナトリウムは、健康維持のために非常に重要な役割を持つ栄養素のひとつです。
ナトリウムは、体内で血液の量や細胞と細胞の間を満たす細胞間液と呼ばれる水分の量をコントロールするほか、体内の酸とアルカリのバランスを調整する働きがあります。
そんな身体に必要な栄養素の一つであっても、摂取する量に注意が必要な事があります。代表的なのは、腎臓の機能が低下している猫やシニア猫です。
これはナトリウムの排出に腎臓が大きく関係しているためです。腎臓は、余計なナトリウムを腎臓で濾過(ろ過)して排出します。
しかし腎臓の機能が低下していると、ナトリウムを上手く濾過(ろ過)することが出来なくなってしまい血圧が上がりやすくなり、血圧上昇はさらに腎臓への負担を増やします。
※濾過(ろ過)とは・・・血液と共に運ばれてくる身体にとって不要なもの(老廃物)を捨て、薄く多量の尿のもととなる原尿をつくる事。
そのため、腎臓病のステージによっては、タンパク質の制限と合わせてナトリウムの制限が必要になる場合があります。
※参考:
・「低リン・低ナトリウム」の食事療法でNa(ナトリウム)を下げる。
②BUN(尿素窒素)
⇒BUN(尿素窒素)はタンパク質を摂取する事でできる分解産物で、通常は体の外に捨てたい毒素(窒素化合物)です。
通常、この物質は体に毒が溜まらないように腎臓から捨てられていくので、健康であればこの数値は血液中には溜まりません。
実際には体の中にはBUN(尿素窒素)以外にも、もっとたくさんの種類の尿毒素物質は存在していますが、このBUN(尿素窒素)の数値が高いときにはそれら尿毒素物質がたくさん体の中を巡っている状態になっていると解釈されます。
なので猫は気持ちが悪い、だるい、胃がムカムカして食欲が落ちる、嘔吐するなどの症状が起こります。
但し、腎臓病以外でも心臓病をはじめ循環状態が悪いときや、単なる食後など、他の原因でも検査値は上がってしまうので、他の所見を含めての評価が必要です。
・薬やサプリメントを使ってBUN(尿素窒素)を下げる。
・皮下点滴を行ってBUN(尿素窒素)を下げる。
⇒皮下点滴をすることで腎臓に行く血液量が増え、毒素を体の外に出すことができるため、猫ちゃんは体がとっても楽になります。
・腎臓病用の療法食で「リン」と「タンパク質」を制限した食事療法でBUN(尿素窒素)を下げる。
※リンを制限する意味
⇒腎機能が低下すると①リンを排出できなくなる、②ビタミンDを活性できなくなります。血液中のリンが増えると、リンを下げようとする代わりに、カルシウムの吸収が促進されます(カルシウムが高くなる)。カルシウムが高くなると腎臓の石灰化が起き、腎機能のさらなる低下を生じます。
※タンパク質を制限する意味
⇒腎機能が衰えてくると、タンパク質の代謝で生じる尿素をうまく排せつできなくなります。そのため、タンパク含量を抑えた食事をあげる必要があります。ただ、タンパク質は体を作るうえで大切な栄養素なので、過度に制限する必要はありません。
・いつもより多めに飲水させてBUN(尿素窒素)を下げる。
⇒腎臓が悪い時は、水を飲ませることで老廃物を尿として出すことができます。ただし、なかなか水を飲んでくれないんですよね…。
③CRE(クレアチニン)
⇒CRE(クレアチニン)は筋肉中にできる老廃物で、通常はBUN(尿素窒素)と一緒に排泄によって身体の外に出さなければいけないものです。
しかし腎臓の機能が低下すると、CRE(クレアチニン)の排出量が低下し、更に血の中にあるクレアチニンの値が上昇してしまいます。
つまり、血液中の猫のCRE(クレアチニン)の数値が高い場合は正常にCRE(クレアチニン)の老廃物を身体の外に出せていないという事になり、腎不全による腎機能の低下が疑われるのです。
※基本的にはBUN(尿素窒素)を下げる方法と一緒です。
④TBIL(総ビリルビン)
⇒TBIL(総ビリルビン)は、古くなった赤血球が壊された時に出てくる色素で、黄疸の原因物質です。胆汁の流れが悪くなると高値を示します。
慢性腎臓病に対する治療を始めていくと、黄疸の指標である「ビリルビン」の値が日に日に上がっていく事があります=腎不全により食事を受け付けず、「肝リピドーシス」という病気にかかっている可能性があります。
※「肝リピドーシス」とは、ご飯を長く食べていない状態が続くと発症するもので、肝臓へ脂肪が異常に蓄積する状態のことです。肥満体の猫が3~7日間絶食状態となると発症しやすいと言われています。
※参考:【こんな症例も治ります シリーズ344】猫の長期の食欲廃絶も適切な診断と治療でコントロールします
・しっかりご飯を食べさせる事でTBIL(総ビリルビン)を下げる。
⇒但し、ただ食べさせれば良いというわけではありません。長期間食べていない体にいきなり大量の栄養を取らせる事はとても危険です。
⑤IP(無機リン)
⇒腎臓病を悪化させる栄養素に「リン」というものがあります。
リンはもともと骨や歯、細胞をつくるために必要で、体にとってとても大切な栄養素ですが、腎臓病の猫は、腎臓機能の低下によって余分なリンが捨てられなくなり、過剰に体にたまったリンが慢性腎臓病を悪化させる重要な原因となることが知られています。
このため、このリンを制限した療法食を与えるよう、食事管理が必要です。実際に腎臓病になった猫にリンを制限した腎臓病用の食事を与えると、リンを制限した食事を与えなかった場合よりもおよそ3倍も長く生きることができたというデータもあります。
※参考:腎臓病の食事管理
・「低リン」の療法食でIP(無機リン)を下げる。
⇒慢性腎臓病の猫では、リンとタンパク質が制限された腎臓病用療法食の給餌が推奨されます。最近はリンのみを制限したフードも販売されており、病状しだいではそちらのほうが適している場合もあります。
・リン吸着剤でIP(無機リン)を下げる。
⇒療法食を食べさせても血中リン濃度が高い場合は、リン吸着剤の内服が推奨されます。吸着剤としてはレンジアレン、プロネフラ、キドキュア、イパキチン、リオナなどがあります。
⑥RBC(赤血球)
⇒赤血球の働きは、体の組織や細胞に酸素を運び、不必要になった炭酸ガスを回収することです。
一般的に下痢・嘔吐・多尿などにより脱水症状を起こしているときは赤血球数の増加がみられ、貧血のときには減少します。又、腎不全も貧血を起こす原因の一つになります。
腎臓は尿を作る臓器です。しかしそれだけではありません。体内のバランスを整えたり、血圧を調節したり、ホルモンを分泌したりもしています。
腎臓が分泌しているホルモンの中の1つが、エリスロポエチンという造血ホルモンで、これは骨髄に対して赤血球を作るように促すホルモンです。
そのため腎臓の機能が低下してしまうと、赤血球が作られなくなっていき、貧血を起こす原因となります。
・輸血で赤血球のRBC(赤血球)数値を上げる。
⇒但し、輸血は貧血という症状に対して、致死的な状態にならないように行う「一時的な治療」であり、その間に原因に対する治療を行う必要があります。
・サプリメントで「鉄」を補給してRBC(赤血球)数値を上げる。
⇒サプリメントとしては「プロラクト鉄」などがあります。
・赤血球造血刺激因子(ESA)製剤による治療でRBC(赤血球)数値を上げる。
⇒使う商品としては「エスポー、ネスプ」などがあります。
⑦HGB(ヘモグロビン)
⇒RBC(赤血球)が酸素を運ぶ上で、重要な役割を果たすのがHGB(ヘモグロビン)=血色素です。
HGB(ヘモグロビン)は、脳、内臓、筋肉、など体内の全ての組織が活動するために必要な酸素を運搬する能力を担っています。一般的にHGB(ヘモグロビン)数値が高いと脱水、低いと貧血などが考えられます。
HGB(ヘモグロビン)は赤血球の中に存在します。そのため、赤血球そのものの数が少なくなったり、赤血球は十分にあってもひとつひとつの赤血球の中にあるHGB(ヘモグロビン)が少なくなったりすると、貧血になります。
HGB(ヘモグロビン)が少なくなる事により貧血が起こる原因は、大きく分けて2つあります。端的に表現すると、HGB(ヘモグロビン)が「消費されすぎているか」内臓疾患などにより「生産できていないか」です。
尚、慢性腎臓病の場合は、慢性的な前炎症状態と関連することが知られていて、炎症状態により産生される炎症性サイトカインは急性相蛋白であるヘプシジンの誘導によって相対的な鉄欠乏を引き起こしヘモグロビン生成が抑制されてしまいます。
・輸血で赤血球のHGB(ヘモグロビン)数値を上げる。
⇒但し、輸血は貧血という症状に対して、致死的な状態にならないように行う「一時的な治療」であり、その間に原因に対する治療を行う必要があります。
・サプリメントで「鉄」を補給してHGB(ヘモグロビン)数値を上げる。
⇒鉄はヘモグロビン生成および赤血球の機能にとって不可欠で、ESA治療を受けているすべての猫に投与が推奨されています。
⑧HCT(ヘマトクリット)
⇒HCT(ヘマトクリット)は、赤血球容積とも言われ、血液中の赤血球成分の容積が全血液に対してどのくらいの比率を占めているか(血液の濃さ)を表した数値です。
そして、腎臓などの内臓機能が正常に働かず体に不必要なものが溜まっていくと、血液を作るホルモンが少なくなるため、赤血球数(RBC)やHCT(ヘマトクリット)値などの数値も低くなり、貧血を示し始めます。
・輸血でHCT(ヘマトクリット)数値を上げる。
⇒但し、輸血は貧血という症状に対して、致死的な状態にならないように行う「一時的な治療」であり、その間に原因に対する治療を行う必要があります。
・サプリメントで「鉄」を補給してHCT(ヘマトクリット)数値を上げる。
⇒鉄はヘモグロビン生成および赤血球の機能にとって不可欠で、ESA治療を受けているすべての猫に投与が推奨されています。
⑨PLT(血小板)
⇒PLT(血小板)は、血を止める働きをします。少なくなると出血しやすくなりなんらかの炎症やガンなどで数が増加することがあります。肝機能障害で減少することもある。
※調べ中
まとめ
①腎臓と肝臓が弱っている可能性がある。
②BUN(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)、IP(無機リン)の数値を下げる為に「リン」「タンパク質」「ナトリウム」を制限した腎臓に負担がかからない療法食に切り替える。療法食でも数値が下がらなければ+サプリメントも併用して数値を基準値に戻す。
③BUN(尿素窒素)値を下げる為にできるだけ水分を摂取する様工夫する。又はドライフードからウェットフードに切り替えてより水分摂取量を増やす。
④水分摂取だけでなく、しっかりご飯を食べれる様に工夫する。
⑤療法食と併用して「鉄」をサプリメントで摂取して貧血を防ぐ。
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